私自身、2社目への転職で年収が下がりました。エージェントの担当者から「年収アップが狙えます」と言われて決めた転職だったので、正直こたえました。そして当時の私は、公的な制度で補える部分があることをほとんど知りませんでした。
転職で年収が下がった時、雇用保険にはいくつかの仕組みがあります。すべての人が使えるわけではありませんし、金額も生活を一変させるほどではありません。それでも、知らずに手続きの期限を過ぎてしまうのはもったいないと思います。私はまさにそれをやってしまった側です。
この記事では、転職で年収が下がった時に関係してくる公的な制度を整理します。制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては必ずハローワークで最新の内容を確認してください。
転職で年収が下がった時に関係する制度の全体像
まず、自分がどの段階にいるかで使える制度が変わります。
制度を調べていて混乱しやすいのは、「離職期間があったかどうか」で話がまったく変わる点です。ここを整理しないまま調べると、自分に関係のない情報ばかり読むことになります。
| 状況 | 関係してくる制度 |
|---|---|
| 離職して求職活動中 | 基本手当(いわゆる失業手当) |
| 早めに再就職が決まった | 再就職手当 |
| 再就職したが賃金が下がった | 就業促進定着手当 |
| スキルを身につけたい | 教育訓練給付金 |
| 在職のまま転職した | 雇用保険の給付は対象外 |
最後の行が重要です。在職中に次を決めて切れ目なく移った場合、失業給付の枠組みには入りません。私の2社目への転職はこのパターンだったので、そもそも対象外でした。年収が下がったこと自体を補う制度は、この場合ありません。
つまり、これから書く制度が使えるのは、離職期間があって雇用保険の手続きをした方が中心になります。ここを最初に押さえておくと、無駄な調べ物が減ります。

再就職手当と就業促進定着手当
年収が下がった時に最も直接効くのが、この2つの組み合わせです。
離職して基本手当の受給資格を得たあと、早めに再就職が決まった場合に支給されるのが再就職手当です。給付率は、再就職した時点で残っていた基本手当の日数によって変わります。
| 支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の1以上 | 60% |
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
計算は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」です。早く決まるほど残日数が多くなるため、金額も大きくなります。「失業手当を最後までもらったほうが得では」と考える方もいますが、早期に決めたほうが有利になる設計になっているわけです。
そして、転職で年収が下がった時に直接関わってくるのが就業促進定着手当です。これは再就職手当を受けた方が、その再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職後6か月間の賃金が離職前より低かった場合に支給されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 再就職手当を受給し、同じ事業主に6か月以上雇用された方 |
| 条件 | 再就職後6か月の賃金が離職前の賃金を下回っていること |
| 計算 | (離職前の賃金日額 − 再就職後6か月の1日分の賃金)× 賃金支払基礎日数 |
| 上限 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 20% |
上限については、令和7年4月に引き下げが行われています。それ以前は支給残日数の40%相当額(再就職手当が70%で支給された場合は30%相当額)が上限でしたが、給付率にかかわらず一律20%に変更されました。以前の情報を見ると金額の見込みがずれるので、注意が必要です。
なお、かつてあった就業手当は令和7年4月に廃止されています。古い記事を読んでいると出てくる制度なので、あわせて頭に入れておいてください。
金額はケースによりますが、生活が一変するほどの規模ではありません。それでも、年収が下がった直後の数か月をしのぐ意味では小さくないと思います。申請には期限があるので、6か月経過後に忘れずに手続きしてください。

令和7年4月に変わった点
自己都合で辞めた場合の待期が短くなりました。
自己都合で退職した場合、これまでは給付制限期間として2か月待つ必要がありました。これが令和7年4月から1か月に短縮されています。厚生労働省の案内でも明記されている変更点です。
さらに、自己都合で離職した方が、雇用の安定や就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限なく基本手当を受給できるようになりました。学び直しをしながら次を探す方にとっては、実質的に大きな変更だと思います。
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| 自己都合の給付制限 | 2か月 | 1か月 |
| 教育訓練を受けた場合 | 給付制限あり | 給付制限なし |
私が転職活動をしていた頃にこの仕組みがあれば、選択肢の考え方が違ったかもしれません。収入が途切れる期間が短くなるほど、条件面で焦って妥協するリスクは下がります。年収が下がる転職を避けたいなら、この待期の長さは無視できない要素です。
年収が下がることそのものの受け止め方については転職で年収が下がるのは普通?に、どこまでの下げ幅なら許容できるかは転職で年収が下がる許容範囲は?にまとめています。

収入を戻すための制度も使える
一時的な補填より、戻す手段のほうが効果は長く続きます。
給付でしのぐのは短期の話です。年収を元の水準に戻す、あるいは超えていくには、スキルや経験を積み増すしかありません。ここでも公的な制度が使えます。
雇用保険の教育訓練給付制度は、指定された講座を受講・修了すると費用の一部が支給される仕組みです。種類によって給付率と上限額が異なります。
| 種類 | 給付率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 受講費用の20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練給付金 | 40% | 年間20万円 |
| 専門実践教育訓練給付金 | 50% | 年間40万円 |
令和6年10月1日以降に受講を開始する場合は追加給付があります。特定一般では、修了後に資格を取得し1年以内に雇用保険の被保険者として雇用されると10%(年間上限5万円)が加算されます。専門実践では同じ条件で20%が加算され、さらに修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇した場合には10%(年間上限8万円)が上乗せされ、条件を満たせば最大80%の給付率になります。
最後の「賃金が5%以上上昇した場合の加算」は、まさに年収を戻したい人向けの設計です。対象講座は厚生労働省の教育訓練給付制度検索システムで確認できます。要件はハローワークで相談するのが確実です。
学ぶ分野の選び方は30代のリスキリング完全ガイドに、地方で収入を伸ばす方法は地方で年収を上げる現実的な方法にまとめました。

よくある質問
Q. 在職中に転職した場合も何か使えますか
失業給付の枠組みは使えません。離職期間がないためです。私の2社目への転職もこのパターンで、年収が下がりましたが対象外でした。ただし教育訓練給付制度は在職中でも要件を満たせば利用できるので、収入を戻す側の制度として検討する価値はあります。
Q. 再就職手当をもらうと損することはありますか
基本手当を最後まで受給する場合と比べると、総額では再就職手当のほうが少なくなることがあります。ただし、その間に働いて得られる賃金を含めて考えれば、早期に就職したほうが手元に残る金額は大きくなるのが通常です。判断に迷う場合はハローワークで試算してもらうのが確実です。
Q. 就業促進定着手当はいくらもらえますか
離職前の賃金と再就職後の賃金の差、そして再就職手当の支給残日数によって変わるため、一律の金額はありません。上限は基本手当日額に支給残日数と20%を掛けた額です。ご自身のケースの試算はハローワークに確認してください。
Q. 年収が下がったこと自体を補う制度はありますか
在職のまま移った場合、それを直接補う公的制度は基本的にありません。だからこそ、転職前に条件の内訳を確認することが重要になります。私は額面の総額だけを見て内訳を確認せず、年収が下がりました。後悔しないための考え方は転職で年収が下がって後悔する人の共通点に整理しています。
まとめ
転職で年収が下がった時に使える公的制度は、離職期間があったかどうかで大きく変わります。離職して基本手当の受給資格を得た方であれば、早期の再就職で再就職手当(支給残日数の60%または70%)、その後6か月以上勤めて賃金が下がっていれば就業促進定着手当が関係してきます。令和7年4月には自己都合の給付制限が2か月から1か月に短縮され、教育訓練を受けた場合は給付制限なしで受給できるようになりました。
私から個人としておすすめしたい行動を1つ挙げるなら、離職票を受け取った時点で一度ハローワークに行き、自分がどの制度の対象になり得るかを聞いてみることです。制度は自分から申請しないと受け取れません。私は当時これをやらず、後から使えたかもしれない仕組みの存在を知りました。
なお本記事の内容は執筆時点で公表されている情報に基づいています。給付率・上限額・要件はいずれも改正される可能性があるため、実際の手続きにあたっては厚生労働省およびハローワークの公式情報を必ずご確認ください。このサイトでは、福岡・九州で働く30代が、東京基準ではない現実的な条件のなかで納得できる選択をするための情報を発信していきます。