私はこれまでに2回、退職を切り出しています。1社目のときと、2社目のとき。どちらも会議室のドアの前で一度立ち止まったことを覚えています。転職活動そのものより、この瞬間のほうが緊張したというのが正直なところです。
退職の切り出し方について調べると、「円満退職の作法」といった整った情報がたくさん出てきます。それはそれで役に立つのですが、実際にやってみると、そこに書かれていないところでつまずきます。私の場合もそうでした。
この記事では、私が退職を切り出したときに実際に何が起きたのか、そして今振り返って何を変えればよかったのかを書きます。うまくやった話ではなく、反省を含めた記録として読んでいただければと思います。
誰に最初に伝えるかで、その後が変わる
ここを間違えると、余計な軋轢が生まれます。
私が1社目で退職を切り出したとき、最初に伝えたのは直属の上司でした。これは結果的に正解だったと思っています。順番を飛ばして人事や上位の役職者に先に伝えると、直属の上司の立場がなくなるからです。
ただ、私は事前に同僚に相談していました。信頼している先輩に「実は転職を考えている」と話していたのです。悪気はなく、背中を押してほしかったのだと思います。ところが、その話が私の口から上司に伝わる前に、別のルートで届いてしまいました。
上司から「聞いたんだけど」と切り出されたときの気まずさは、今でも覚えています。私が伝えるべきことを、私以外の誰かが先に伝えてしまった。これは相手に対して失礼だったと反省しています。
| 伝える順番 | 私の経験からの推奨 |
|---|---|
| 直属の上司 | 必ず最初。ここは飛ばさない |
| 人事部門 | 上司との合意後、会社の手続きに沿って |
| 同僚・チーム | 上司と相談して公表のタイミングを決める |
| 社外の取引先 | 引き継ぎの段取りが固まってから |
2社目で退職を切り出したときは、この反省を活かして誰にも事前相談をしませんでした。孤独ではありましたが、順番としてはこちらが正しかったと思っています。

退職の切り出し方で私が実際に使った言葉
理由を長く語るほど、話がこじれます。
私が2社目で退職を切り出したとき、事前に考えていたのは「短く、決定事項として伝える」ということでした。相談の形にすると、引き止めの余地を残すことになるからです。
実際に伝えたのは、次のような内容でした。まず時間を取ってもらうことをお願いし、会議室で二人になってから「一身上の都合で退職させていただきたいと考えています」と切り出す。そのうえで、次が決まっていること、希望する退職時期を伝える。理由については深く語らない。
理由を細かく説明しなかったのは、意図的です。1社目のとき、私は退職理由を丁寧に説明しようとして、結果的に前職への不満を並べる形になってしまいました。相手からすれば「では改善するから残ってほしい」という話になりますし、こちらとしても気まずい。事実として業界の将来性に不安があったのですが、それを説明すればするほど、会社批判に聞こえてしまうのです。
| 伝え方 | 私の実感 |
|---|---|
| 決定事項として伝える | 話が前に進みやすい |
| 相談の形で切り出す | 引き止めの余地を残し、長引きやすい |
| 理由を詳しく語る | 反論や改善提案を招きやすい |
| 感謝を先に述べる | 相手の受け止め方が和らぐ |
4つ目は、2社目で意識した点です。退職を告げる前に「これまで育てていただいたことには感謝しています」と一言添えました。形式的に聞こえるかもしれませんが、実際にそう思っていましたし、その後の会話の雰囲気は明らかに違いました。
引き止められたときにどうしたか
想定していたより、あっさりしていました。
正直に書くと、私は引き止めを相当身構えていました。強く慰留される、条件を提示される、退職日を引き延ばされる。そういう展開を想像していたのです。
実際には、1社目でも2社目でも、強引な引き止めはありませんでした。「そうか」という反応があり、退職時期と引き継ぎの話にすぐ移りました。拍子抜けするくらいでした。
ただ、1社目では「もう少し考えてみないか」と一度は言われました。ここで私が良かったと思っているのは、次が決まっていたことです。次の職場が決まっていれば、「もう先方にお返事してしまっているので」と言えます。決まっていない状態で切り出していたら、揺らいでいたかもしれません。
在職中に次を決めてから動くことの価値は、収入面だけではないと私は考えています。退職を切り出す場面で迷わずに済むという意味でも大きいです。在職しながら進めた3社目の転職活動については3社目への転職で私がうまくいった理由に書きました。

いつまでに伝えるべきか
法律上の期限と、実務上の期限は違います。
退職の申し出時期については、民法第627条に定めがあります。期間の定めのない雇用契約の場合、労働者から解約の申し入れをすると、申し入れの日から2週間を経過することによって雇用は終了する、という内容です。
ただ、実務としてこの2週間で辞めるのは現実的ではないと私は思います。多くの会社では就業規則で「1か月前まで」「2か月前まで」といった申し出期限を定めていますし、何より引き継ぎが終わりません。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 民法第627条 | 申し入れから2週間の経過で雇用終了 |
| 就業規則 | 1か月前・2か月前などの申し出期限を定めていることが多い |
| 実務の感覚 | 引き継ぎの分量を逆算して決める |
私の場合は、どちらの退職時も1か月半ほど前に伝えました。担当していた業務の引き継ぎ資料を作る時間を考えると、それくらいは必要だったからです。逆に言えば、引き継ぎの分量が少ない立場であれば、もっと短くても回ります。自分の担当範囲から逆算するのが実用的だと思います。
なお、就業規則の内容は入社時に配られたきりで手元にないことも多いはずです。切り出す前に一度確認しておくと、会話の中で条件を出されたときに慌てずに済みます。

地方だからこその難しさ
狭い世界で、後々まで顔を合わせます。
これは福岡県の地方エリアに住んでいて実感していることですが、地方の転職は「辞めた後も関係が続く」前提で考えたほうがよいと思います。同じ業界の中で動けば、取引先として再会することがありますし、前職の同僚と地域のどこかで会うこともあります。
都市部であれば、辞めればそれきりという関係になりやすいかもしれません。地方はそうはいきません。私が3社目で同じ業界内に移ったときも、前職とまったく接点がないわけではありませんでした。
だからこそ、辞め方は丁寧にしておいたほうが得です。引き継ぎを最後まできちんとやる、感情的なやり取りを残さない、悪口を言って去らない。当たり前のことですが、地方ではこの当たり前の重みが違うと感じます。
私が2社目を辞めるとき、正直に言えば不満はありました。提示された条件と実態が違っていたのですから。それでも、それを最後に言葉にすることはしませんでした。言っても状況は変わりませんし、狭い地域で自分の評判を落とすだけだと考えたからです。地方での転職事情については地方で年収を上げる現実的な方法にも書いています。

よくある質問
Q. 退職の切り出し方で最初に何を言えばいいですか
まず時間を取ってもらうことをお願いし、二人で話せる場所を確保するのが先だと思います。立ち話や他の人がいる場所で切り出すと、相手も対応に困ります。そのうえで「一身上の都合で退職させていただきたいと考えています」と、決定事項として簡潔に伝えるのが私の実感では最もこじれにくい形でした。
Q. 退職理由は正直に言うべきですか
事実として簡潔に伝える程度でよいと思います。私は1社目で理由を丁寧に説明しようとして、結果的に会社への不満を並べる形になり気まずくなりました。詳しく語るほど反論や改善提案を招きます。次が決まっていることを伝えれば、それ以上の説明を求められることは少なかったです。
Q. メールで伝えてもいいですか
まずは口頭で伝えるほうがよいと思います。そのうえで、書面としての退職届は会社の手続きに沿って提出する形になります。どうしても対面が難しい事情がある場合は別ですが、順序としては口頭が先です。
Q. 次が決まっていない状態で切り出しても大丈夫ですか
可能ではありますが、私はおすすめしません。引き止められたときに判断が揺らぎますし、収入が途切れると次を焦って決めることになります。私が2社目で条件を妥協してしまったのも、比較検討の時間を取らなかったことが原因でした。年収面の考え方は転職で年収が下がるのは普通?に整理しています。
まとめ
退職の切り出し方で私が実際に効いたと感じたのは、直属の上司に最初に伝えること、決定事項として簡潔に伝えること、理由を語りすぎないこと、そして感謝を先に述べることの4点でした。時期については民法第627条で申し入れから2週間という定めがありますが、実務では就業規則の申し出期限と引き継ぎの分量から逆算するのが現実的です。
私から個人としておすすめしたい行動を1つ挙げるなら、切り出す前に誰にも相談しないことです。私は1社目のとき、信頼していた先輩に事前に話してしまい、それが自分の口から伝わる前に上司に届きました。背中を押してほしい気持ちは分かりますが、その一言が順番を壊します。相談したいなら、社外の人にしてください。
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